3.早下理世「暮らしそこない」
3.早下理世「暮らしそこない」
ゆるされはじめる梅だいつかわすれてしまう孤独だ
きれいになれるまほうなれないしあわせ雲雀が陽をよぎる
ぶらんこを立ちながら光の中へ出る
ゆらめく蜂たち息をしようとしてする息のおもたさ
しずかで傘もあります流氷のあめあがりはいまから
またはないけどまたねと言えばクレソンの盛りでしょう
おぼえることは愛だったかなこれからすきなだけ桜
目覚めても夏にいる骨に皮膚のうすさ
ほんのすこしの青田です予言にはもう飽きたので
そのままわたしを撃てよそのまま蔦が青くて鋭利
抱き込んでそのぶん川床が晴れていること
せかいの未来みたいでした赤い金魚に泣いたりしてて
さんざんくらげ嘘ならきっとあたらしかった
まぶしく昼寝触れてさみしくなりましょう
そして噴水いまだけ会えるからだでも
玉ねぎさらす脳をわすれるための脳
なのにみだれている夏野さよならはじょうずでしたか
しゃわーあびますひとりがずっとだめだったのです
花火が落ちきって湖のない町でした
砂浜の砂がおいしい秋雨のそとがわで
曇りなのにあかるいね新涼をレジ袋飛ぶ
濡れたけど桃だよあしたも夜来るね
血はほんもののままおわるかなひややかな陽がとおる
住めばあかるい秋風のあとのゆらめき
さみしいりんごありますよいまは今っぽいから
星のささやかな音すべりだいに世界がほそい
ひどく水が澄んでいることたとえば馬へ明けてくれますか
月がひかりをもってくる居たようにみえたけど
夜食もう小雨が終わりそうに雨
牡蠣過去未到ただしいひとでありかすけーど
やさしさをわかってしまう枯園を出て
めりーくりすますゆびにゆがんでゆく鋏
北風がつづかないな水道水もおいしくて
つめたい傷もって愛されようか横道なので横
身体だけで生きてみれば雪原の上も雪原だった
ここに光があって水は光と気づくまでの鯨
存在からはじめようよくある火事をふりかざす
沿うままの氷柱をどうか会えませんように
明けてもみぞれ風は呼吸と同じこと
触れることのない手が外套を脱ぐためにある
最大限雪うらないここであなたを無くしてみよう
それでも記憶あるから波はつづくよ春のはじめかた
みじかくたって別れだ春星を流れるように電車
未来たしかにミモザありそれを呼ばないための祈りも
もしもしはるさめ吐かれるものはだいたい息
もともと夢はよわいね下水をゆっくりただよう白魚
口から出ればことばも空気でしたぬるいたんぽぽ
百回言ったら会えるかもなあ空に春来て
悪夢その雨この際どこまでだって花見のさなか
知らないかなしみがさえずりの中でよみがえるの

