5.「行列」
5.「行列」
百万の靴の行き交う金魚かな
呼び鈴の彼方に夕立の都心
昨晩の大雨のこと油蝉
なつうみは人体を蓄えている
夕凪や桶のことりと裏返る
改札を抜けて改札蝉の殻
新涼の市長の鼓舞の鳴り渡る
秋晴の寺社スクロールして行こう
仏像をひたひたと過ぎれば九月
秋よグライダーはゆるやかに老いる
風吹けば夜寒の街の骨だらけ
おやすみの電波は祈り蔦紅葉
台風の近くて影の立ち止まる
宵闇の温泉街の濡れてゆく
親は子を子は秋雨を握りしめ
良夜への列車に乗ったから切るね
横顔のずらりと月の新宿へ
夜食とる一人前の椅子と夜
雁よまた鐘が平野を従える
空が鳴る小春日和のストライク
マフラーを解けば京都の平らなる
海底に似て初雪の眠さかな
着ぶくれて地下鉄は朝を浮上する
底冷えのおにぎり縦に剥いて午後
遠火事に夢の孤独を忘れゆく
葬列のごと影とゆく十二月
冬やこの肉いくらなら食べますか
聖夜来たりて冷飯の芯を噛む
看板の巨大に笑う師走かな
リュック倒れていて忘年会を去る
あげますと言えば障子の先に声
手袋を影と見せ合う実家の夜
年の湯のゆらりとイントロから歌う
団欒を演じる除夜で滅ぼうよ
雪国のふと剥製になる眠り
まんまると言う元日のモスバーガー
寒月と歩く言葉を忘れたく
さようなら冬野に喝采が来るよ
厳寒のレール踏む人いない人
雪を告ぐ子や行列が空を向く
思い出はいつも無風でみかん剥く
ほつれ糸吹けば故郷は雪の底
歩き疲れて星朧の待合室
渋滞や春風の園児が渡る
風船という鮮やかな不発弾
映画より覚めて四月の高さかな
懐かしい骨に会う花吹雪です
ジョッキぶつけ合って春愁あなたにも
どっと沸く花見の夜のジャグリング
沿道の子が先頭を駆ける春

