京都俳句賞

京都俳句賞応募作品20

20.舘野まひろ「吹絵」

20.舘野まひろ「吹絵」
この人に雨の水鶏を見せたくて
旅人はゆつくり歩く茂かな
日傘より困つた人の出てきたる
手鏡のうすき縁どり桐の花
サイリウム折つて涼しくなりにけり
もとの名は松下電器レモン咲く
煙草盆左に金魚鉢右に
過ぎてより毒消売と分かりけり
箱庭の人にはなれて坐る人
拝啓のあとの空白立葵
風鈴に飽きて軒しづくに飽きて
灰皿に重たきひかり根切虫
胸元に天道虫がほしくなり
信号のすこし向うの藻刈かな
天ぷらだかさつま揚げだか大西日
ひたすらに退屈烏瓜の花
水を打つべく雑念を払ふべく
電球に集まつてきて踊るなり
桔梗や叱責ほどの雨が降り
若きこと詫びて瓢の寺に入る
むらさきといへばその人衣被
切傷のさらりと治る一遍忌
水引の花川ひとつ道ふたつ
帰りしの空はるり色秋の草
便箋の白き二枚目鳥威
唇が檸檬と言ひたがつてゐる
目ざめては飯つくりけり葉鶏頭
折鶴のかほの三角冬に入る
そのほかの靴も揃へて十夜寺
ごきげんな顔が厠に鳰
手袋の指がゆつくり読む墓石
話すのをやめて落葉を見てゐたり
食べられる花もありけりクリスマス
冬の蝶夜の匂ひの本ひらく
日めくりの明日透けたる関東煮
播州は吹絵のやうにみぞれけり
一片の国債ありし鶴凍つる
鍵盤の白は安心厚氷
すこしづつ焚火の顔となつて来し
白魚の眼ひつくり返りさう
座つたり立つたり春昼の三人
切株は一人分なり西行忌
蘖や赤鉛筆は耳の上
湖を離れてよりの春の風
冗長な話のあとのチューリップ
虚子の忌のどこもかしこもずぶ濡れで
嘘つきに針を千本壬生念仏
すぐに止む雨にも傘を濃山吹
水に鳥木に鳥のゐて瓜の花
雨の日の本をえらみて更衣
十までは指でかぞへて水すまし
自画像のゴッホ不機嫌かたつむり
大義なくさくらんぼうは光りけり
雨粒に草の色ある夏書かな
咳くやうに水鉄砲の水をはる
ほうたるを見てゐる水を聞いてゐる
姿見のうすき傾き夏料理
よいことと水羊羹がありにけり
立つて見る滝と座つて見る滝と
湖に雨のとがりし夏祓
ペンを置くやうに草蜉蝣のゐる
てのひらは糊の匂ひの地蔵盆
枝豆の皿の一等あかるくて
元町の七夕笹にふれてみる
しつとりと指に傷ある棗かな
昼からは目を休ませて女郎花
八百比丘尼伝承雨の月昇る
抽斗の底に文ありゐのこづち
石清水詣りてよりの下り鮎
近江路や鼈甲飴のやうな月
芭蕉破る鞍馬は雨の一夜とや
つゆくさはあををつらぬくほかなくて
仏壇の白き湯呑や秋の山
菊人形見てゐる空が夜となり
家と家つなぐ電線烏瓜
近江より一通の文爽やかに
飴玉をくるむセロファン空也の忌
たたまれて文ふつくらと帰り花
セーターを着る一寸の暗さかな
葱洗ふ水のすみずみ汚しけり
掛乞に油のくさき煙かな
スケートの風に身体を押し込めり
一人にはこの大根が丁度よく
中京のなかなか雪にならぬ雨
くつしたの中のくるぶし山眠る
鳥の巣につめたき枝の入りけり
初蝶の影の張りつく土の上
真白な紙のナフキン鱵漁
梅真白雨後のしづくをあやしけり
一枚の葉書つめたき雛の家
卒業や水のグラスにうく氷
涅槃会のみんな車で来りけり
雪しろをぬけて助六寿司来る
よつぽどのことが蕨の渦にあり
市旗ゆれて県旗ねじれてあたたかし
うららかに鳥の踵の浮いてをり
水ばかり飲んで空腹桃の花
桃咲いて十字に畳む薬包紙
金鏝の三角四角藪椿
風船が百万遍を曲りけり

計28時間約2200句が誕生した例のパフォーマンスがアーカイブに!

2025京都大学祭NF企画「東海。道五。拾三。次。」のアーカイブページが公開されました。

収録内容に、

・映像3時間

・コラージュ作品12点

・俳句約2200句

・パフォーマンス写真140点ほど、その他パフォーマンス映像など

こちらからご覧いただけます

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