24.大崎素直
24.大崎素直
春浅し教官を待つ教習車
合鍵を返すだけの日いぬふぐり
春光を昇るガラスのエレベータ
黒人の爪は桃色水温む
独身か訊かれる年や雛あられ
遅刻魔と認定されて草の餅
サラダ菜や家それぞれにドアの音
花時の本屋溢れるほどレシピ
物言わぬ監督へ降る桜蕊
蜜蜂を綺麗に避けて行く眼科
春愁は立体駐車場の中
春昼をポムポムプリン踊りをり
食券の軽く吐かれる夏はじめ
飛行機は翼から描くアマリリス
弱点の徐々に見つかるねじりばな
短夜の真中にカーブミラーあり
でこぴんで浮輪の砂を落とす帰路
足の指すべて使ひて立つ熱砂
池の夜や蟇もわたしも肺呼吸
見せつけるやうに熱帯魚の尾鰭
許可なしに飲まれる田中のソーダ水
金魚飼ふ水族館の控室
成田まで島の小蜘蛛を連れてくる
長旅に飽きてピンクの氷菓かな
ままごとに不審者役のゐる残暑
寝過ごしてブロックスイカ一人で食ふ
送火の消えて全員まだ見てゐる
盆棚に缶の飲料ばかりあり
飛行機の九月に着陸するところ
たうきびを殺すつもりで齧りきる
話すたび里芋に火の入りゆく
集まつて芋煮の鍋を覗けない
泣くときは鼻の奥から胡桃割る
嬉しくて何度も混ぜる茸飯
銀杏を踏む勢ひであきらめる
聞き役をしつつ見てゐるパフェの栗
イヤリング揺らして牡蠣を剥く必死
寒晴や色から決めるプレゼント
水なぞりゆく冬眠のカブトガニ
ボールから影引き剥がすラガーマン
半纏を着てしばらくは鳥の真似
引越して少し近づく寒北斗
手袋の似合ふをんなになりにゆく
菜箸でオリオンの位置整える
おろし金からほぐれゆく冬林檎
羽ばたけるたましひそれは寒雀
渡されるコーヒーの液面へ雪
立ち向かふ寒蜆つぎつぎ開く
そのへんの蜜柑を乗せる鏡餅
さまざまな海の話や年忘
