7.桜屋「不器用」
7.桜屋「不器用」
白和えの豆腐潰して長閑かな
蝶生る和紙工房の漉き始め
新歓に作り笑顔の溢れたり
級友とキャベツ半玉割り勘す
四歳の王手飛車取り山笑ふ
弁当のわらび炊き込む夜更けかな
蜜蜂の軌道や三センチのブレーキ痕
烏野豌豆に仁王立ちなる園児かな
万緑に機関車の影激しけり
母の日や殻の混じりし炒り卵
万緑やハート描きしラテアート
母の日や寸動鍋にルーの焦げ
野薊やケーキの切れない子が私
夏めくや円墳裏にかくれんぼ
梅雨めくや岩波文庫褪せてをり
欠伸してけふの蜘蛛の巣みづみづし
草刈れば季語いつぱいの空き家かな
満腹やポンと涼しき聴診器
滴りや盲導犬の浅眠り
トマト食ふ自転車飛び乗つて遅刻
右腕の包帯解ひて涼意かな
飲み干せば熱奪はれて麦茶の香
スーパーに採れて二時間ほどの茄子
園児みなライオンへゆく夏日かな
単線複線単線複線青田波
入道雲刺激しに行くJAL機かな
入玉を見守つてゐる簾かな
照り焼きの味の薄くて盆帰省
学食の鯖やケの日に戻りゆく
銭湯の話題となりし甲子園
養殖の網を抜け出す鰻かな
ラケットのやうに団扇を仰ぎけり
サーカスのチラシ余りて残暑なり
洋梨に色ついてゐる裸婦画かな
鶴折つてしまふ夜学の終はりかな
しいたけに小指で触るる赤子かな
名月や望遠鏡の代はりの手
大西日網戸にひかり波うつて
新米に卵黄の二度跳ね沈む
畝刈ればゴッホの使ふ赤さかな
神輿よりずらつと渋滞伸びてをり
木犀は粉となりゆく箒かな
子どもみな神輿に座る夕べかな
宮入りの神輿の鈴の止まりけり
銭湯を出れば消灯星月夜
爪切りに爪の残りや朝寒し
行く秋や詩を見てしまふ絵本展
行く秋や祖父の数珠にて祖父の通夜
初雪に自転車まばらなカラオケ屋
デニッシュの焦げ目のひらり今朝の雪
早朝や畝の通りに大根葉
淑気満てボードゲームを開封す
数の子を噛んで光沢の半減
居酒屋に新成人の群れあまた
湯冷めしてケーキの味の喧嘩かな
Siriのみを話し相手に枯野原
龍天に登るサーカスのフィナーレ
三年の悔ひを数へて卒業す
卒業の先輩ぐっと抱擁す
卒業の日本酒ごとに乾杯す
隣席に実家恋しき新社員

